中小企業のM&Aは事業承継の最終手段?【間違った認識を捨てよう】
2020年以降は、企業規模の大きさに関わらず多くのところで「M&A(企業の合併買収)」という言葉を耳にするようになりました。このマッチングの支援を行う専門機関として、事業引継ぎ支援センターが、全国に設置されましたが、この統計を見ても年々増加傾向だということが一目で分かります。
ただ、この数字を良く見ると…
- 事業引き継ぎに関する相談が、近年では10,000件以上ある。
- 成約に至ったものは約1200件。
「以前とは、M&Aに対する意識も変わって来た」と言われますが、それでも約9割の事業者が問題解決できていないことが分かります。
そこで、ここでは、
なぜ、M&Aはなかなか成約に至らないのか?
私がこれまで見てきたことを踏まえて解説します。事業承継をする際に、「最終手段はM&Aだなぁ」と言われることもありますが、
❌ 承継が上手く行かない→M&Aにすれば良い
という発想では、問題の本質改善には至らないということが見えてくるはずです。
M&Aがなかなか成約に至らない要因とは?
M&Aを成約させるには、当然、売り手と買い手の合意が必要です。ところが、先に紹介したように約9割が成約に至っていないということは、「合意ができていない=ギャップがある」ということです。
このギャップのほとんどは金額のギャップです。どうして、金額のギャップが生じるのか見ていきましょう。
売り手の状況と心情
当然ですが、財務状況が良い(黒字経営)であれば、それなりの値がつきやすいので、成約に至る割合が高くなります。
ところが、問題は、
資産はそこそこあるが、経営状態が今ひとつ
という場合です。売り手としては、ビルなど不動産資産もあるためにそれらの資産も価格に反映させたいと思うものです。この気持ちは、痛いほど分かります。
そして、何より「我が子の様に育てて来た会社を売却するなんて辛い」という想いも根底にある
買い手の心情
ところが、買い手からすると、「経営状態が悪い会社を買い取ること事態が大きなリスク」と考えます。もちろん、状況を改善させることは可能かどうか?ということも視野に入れますが、現状の価値という視点で見ると、売り手の心情を満足させる様な価格を提示することは難しいということが起きているのです。
ギャップが埋められてはじめてM&Aは成約する
ここで紹介した様なギャップが売り手と買い手にある以上、M&Aは成約に至りません。では、このギャップを埋めるには、どうすればいいのでしょうか。ここでは、売り手の視点で考えてみましょう。
- 収益が見込める様に事業を改善する(財務状況を良くする)。→要時間・難しい。
- 事業規模のサイズを小さくする。→痛みは感じるが、時間はかからない。
この2つに集約されるはずです。ところが、前者の方法を見たあなたはこう思うはずです。
経営状態が良くなったのなら、できる限り内部昇格で継承したい。
結局、M&Aを成約させるには、「それなりの経営状態」が求められるということです。ところが、創業から我が子の様に育て上げた会社が、苦難を乗り越えて「いい状態」になれば、今度は他人に引き渡したくないと感じるものです。
実際に中小企業の経営者は、M&Aに対する意識は変わってきたと言われる現代でも、次のような感覚をもっています。
後継者がいないにも関わらず、M&Aについては考えていない割合が圧倒的に高いことが分かります。昨今、様々なところで、M&Aのメリットは伝えられているにも関わらず、今ひとつ浸透しきっていないことが分かります。
その理由は、中小企業の経営者は、自分の育て上げてきた事業を何らかの形で承継したいが、
M&Aで納得する金額が提示される状態=状態がいいので外部者に譲りたくない
この間に立たされているためです。
その結果が、M&Aが成約に至らない数が9割にも上る原因なのです。
M&Aも内部昇格も後継者問題に取り組むなら方向性を本気で!
冒頭で触れたように後継者問題の解決が難しい場合の手段として、「最終手段はM&Aだなぁ」と捉えることは、早計だということが感じられたと思います。
後継者問題に取り組むには、M&Aをするにしても内部昇格を目指すにしても、覚悟を決めて内部を改善していく必要があるということです。もちろん、親族に譲渡する場合も同様です。
では、どうすれば、組織が改善されていくのでしょう。それは、状況によって様々な方法が考えられますが、いずれも「経営者も従業員もお互いに慕いあえる関係」を作ることができて、初めてスタートラインに立つことができます。