仕事に対するやる気の根源は?「報酬」or「やりがい」?

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町野文孝

株式会社インターテック代表取締役・心理資本経営コンサルタント

これまで自身の中小企業経営の経験を活かし、様々な中小企業の人材育成・組織開発に関わる。方針を打ち出すだけではなく、自ら、企業に入り込み、従業員の方々とも対話を行いながら、組織を作りを行っている。
これまでに、関わった全ての中小企業は、現在も業績を伸ばし続けている。心理面がメインに感じられることも多いが、財務に関するプロでもあり、数々の資格を有している。

どの中小企業の経営者と話をしても、

中小企業経営者の悩み

どうすれば、従業員のみんながもっとやる気を出してくれるのだろう?

と悩まれています。日々、こなしていかなくてはいけない仕事がある上に、中小企業は、これから生き残っていくためには、常に新しいことに挑戦していく必要があるためです。

では、どうすれば、仕事に対するモチベーションが高まるのでしょうか。古くから良く言われるのは、

  • 報酬を得るために働いているという人がほとんどであるために、報酬を上げていけばモチベーションを維持することができるのではないか?
  • いくら報酬が良いと言っても、自分の関心のないことをさせられるのは苦痛であり、持続させるのは難しい。だから「やりがい」「充実感」を大切にした方がいいのではないか?

こうした論争は、古くから様々な人が行なってきましたが、結論は、

結論 やる気を出させるために必要なこと

報酬にある程度満足する状態を維持させながら、「やりがい」「充実感」が存分に感じられる社風・環境を作ること。

ということになります。なぜ、この様に言えるのか、私自身の経験と、これまで行われてきた調査の結果を踏まえながら解説します。

目次

多くの人は、仕事に対するモチベーションが下降傾向

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000045126.html より引用

いきなり残念な話ですが、ベースメントアップス株式会社がインターネット上で行った「モチベーションについての調査」の結果は、上記の通りでした。

【考察】モチベーションが下がってしまった理由とは?

アンケート結果からだけでは、なぜ、モチベーションがこんなに下がってしまう人が多かったのかは分かりませんが、原因と思われる要素を考えてみることは大切です。

私が、中小企業の人材育成・組織開発に関わる時も上記の様な客観的なデータをもとに思考を整理していくというを行う場合もあります。

  • 入社当時は、「〇〇なことをする」「こんな結果を出したい」などと期待していたにも関わらず、現実は大きくかけ離れていたことに気づいたから。
  • 非常に苦労したにも関わらず、それに似合った報酬が得られないから。
  • 毎日同じことの繰り返しで、新鮮さが感じられなくなったから。
  • 社風が自分にあわない。人間関係がうまくいかない。

少し考えてみただけでも、この様な課題点があるのではないか?ということに気付かされます。もちろん、これらの課題点が、どの中小企業にもあてはまる訳ではありませんが、「自分の会社はどうだろうか?」と振り返ってみることは重要です。

とにかく、80%程度の人のモチベーションは下降傾向ですから、何か策を講じるだけでも他社とは違った社風を生み出せると考えてもいいのです。

まずは、モチベーションが高い人を数人育てる

では、どうすればこの危機的な状況から抜け出すことができるのでしょうか。

もちろん、業種・状況・人間関係によって対応策は様々考えられますが、モチベーションが高いと感じられる人がいる場合には、彼らのモチベーションがより高まる様にすることが得策です。

私たちはついつい、至らない点を見つけ、それを改善しようとテコ入れをしようとしますが、テコ入れの程度・方法は非常に難しいものです。

それよりも、モチベーションが高い人がより楽しそうに仕事をし、充実感を感じているということが社内に広まっていく方が、私の経験上、良い結果となっています。

ただ、ここで考えておかなければいけないことは、モチベーションをさらに高めたり、高い状態を維持するには、「報酬」or「やりがい」どちらが大切か?ということです。

【調査結果から】確かに多くの人は報酬を得るために働いている

内閣府が行った世論調査「働く目的は何か?」の調査結果を見ても、圧倒的に「お金を得るために働く」という人の割合が高いのが明確です。

ここで考えなくてはいけないのは、

考えるべき問題

働く目的である「お金」=「報酬」が満たされるとモチベーションは高まるのか?

ということです。これについては、ハーズバーグの研究が有名でしょう。どの様な研究なのか噛み砕いて解説します。

仕事の満足・不満足を調査したハーズバーグの研究から

私たちは、日々仕事をしながら、充実感を感じたり、ストレスを感じたりしています。

アメリカの臨床心理学者のハーズバーグは、人が仕事のどんなところで満足・不満足を感じているのか調査・分析をしました。その結果を紹介します。

仕事に満足している時の関心の矛先は…

仕事に「満足している状態」の人の関心の矛先は、「仕事そのもの」に向いている。

ということです。これでは、ピンと来ないので、具体例を挙げてみます。

ある飲食店でアルバイトを始めた田中さんは、アルバイトに行くのが楽しみになってきました。アルバイトを続けていくうちに常連さんが、声を掛けてくれるようになり、何気ない会話が楽しくなってきたのです。

この様な状況の場合、田中さんは、次の様なことを考えるでしょう。

  • もっとお客さんが満足できる接客はできないだろうか。
  • 今日、常連さんが来たらどんな話をしようかなぁ。

「接客という仕事をどうしようか考える様になる」つまり、「仕事そのもの」「やりがい」に関心が向くようになるというものです。

仕事に不満がある場合の関心の矛先は…

仕事に不満がある場合の関心の矛先は、作業環境に向いている。

ある飲食店でアルバイトを始めた池田さんは、アルバイトに行くのが憂鬱でした。追い立てられるように「〇〇をしろ!」と言われたり、「〇〇をするのは当然だろ」と言われるからです。その割には、時給が安いのです。

この様な状況をあなたも経験したことがあると思います。どんなことを考えたか、思い出してみましょう。

  • いつも偉そうにしている〇〇さんが居るのが嫌だ。
  • お店の雰囲気(社風)が自分にはあっていない。
  • 苦痛な割に時給が安い。

つまり、仕事をする環境・管理体制などに目が行きがちになるということです。

環境が満たされると不満が解消され、モチベーションが高まるか?

では、ここで上記の「環境」が改善されれば、モチベーションは高まるか考えてみましょう。

池田さんの場合で、もっとも簡単に想像できるのは、時給が1000円→1200円になった場合でしょう。

当然、1200円になれば嬉しいことですが、心の中では「あれもこれも息つく暇もないくらいやっているのだから、1200円貰っても当然じゃない?」と思うのではないでしょうか。

こうしたことも踏まえつつ、ハーズバーグは、次の様に結論を出しています。

結論

不満の要因となる環境的な要素が改善されたとしてもモチベーションは高まらない。
不満を抑える・防ぐという効果にとどまるだけである。

重要な点は、「モチベーションが高まるではなく」→「不満が軽減される」という点です。

では、どうすればやる気が高まってくるのか?

「報酬を高くすればやる気が高まる」ということはない

ということが分かりました。これはハーズバーグの調査結果に限らず、他の人の調査結果を見ても同じことが言われています。では、どうすれば、モチベーションは高まるのでしょうか。

「やりがい」が感じられた時に人はモチベーションが高まる

ハーズバーグは、仕事に対して高い満足感を得るには「やりがい」が大切だと結論付けました。

感覚的になりますが、あなたが一生懸命した仕事に対して、お客様が心から喜んでくれると、嬉しく感じ、モチベーションが高くなったと感じたことがあるはずです。

ただし、これは、ある程度の報酬が確保されている状態が条件となります。その理由は、マズローが提唱した5段階欲求を見れば、よく分かります。

つまり、少なくとも「安全の欲求」が満たされている状態が必要だということです。極端ですが、具体例を挙げてみましょう。

ある飲食店でアルバイトを始めた田中さんは、接客が楽しくなってきました。でも、田中さんの経済状況は、とても厳しく、今月の電気代をやっとの想いで支払ったところです。

これでは、いくら仕事に対するやりがいを感じていたとしても、どうしても気になるのは、来月の生活費ということになってしまいます。

まとめ やる気を高めるために必要なことは?

やる気を高めるために「報酬」or「やりがい」のどちらが重要か?ということを考えてきました。

短くまとめると次の通りです。

  • 「報酬」は、重要な存在であるが、報酬そのものだけでモチベーションを高め、持続させることはできない。→「不満感は回避できる」
  • 「やりがい」はモチベーションを高める大切な要素となるが、働く環境「人間関係」「報酬」などの条件がある程度満たされた状態でなくてはならない。

現代は、様々な便利なものがあり、ついつい「〇〇をしたら〇〇という結果が出る」という考え方をしがちですが、私たち「人」は常に、様々なことを考え、複合的に物事を捉えて判断している生き物であるということは、胸に刻んでおきたいものです。

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この記事を書いた人

30年以上、中小企業経営を行っている。その間に大成功もおさめた一方で、離職などの影響もあり、経営の危機を何度か味わう。そこから再び這い上がりながら、「良い中小企業経営の形」を徹底的に追究。
現在は、自身の実践をもとに東海地域の中小企業経営のサポートを行い、関わりのある全ての会社の業績向上を達成し、採用に貢献。

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