【心理資本経営とは?】重要なのに、つい後回しにされがちなことを実践し、企業成長を促進させる
2025年現在も中小企業経営にとっては、とても厳しい状況が続いています。
以下の統計を見ても、じわじわと倒産件数が増加していることが、分かります。
巷では、時折「賃金上昇」という前向きな声が聞こえてくることはありますが、それ以上に物価上昇が激しく、今後も厳しい状態が続くだろうと、予測するのが自然でしょう。
そんな厳しい社会情勢の中でも、「心理資本経営」を取り入れ実践されている中小企業の全ては、利益を伸ばし続けています。もちろん、心理資本経営を取り入れたからと言って、翌月には成果が見られるということはありません。
心理資本経営に取り組まれている中小企業は、短期的な視点とどうじに長期的な視点をもってコツコツと実践されているために、成果が上がりやすい体質になっている。
特別・斬新なノウハウで成果を上げているわけではなく、誰でも実践できることなので、持続性が非常に高い。
実際にどういうことなのか? もう少し詳しく解説します。
苦しいけれども…というマインドでは、絶対に成長にできない。
「仕事は楽しいですか?」といった内容を問うアンケートは、様々なところで実施されていますが、残念ながら「楽しい」と感じている人は少数派です。
もちろん、「楽しくはないけれども、嫌でもない」という人も見られるのですが、全体的な傾向を見ると、
仕事は大変で辛いもの。でも、生活をしていくためには、仕方がない。
こうした認識をしている人が圧倒的で多数であることは、十分想像できるはずです。
なぜ、仕事が苦しいものになってしまうのか?
私自身もそうでしたが、多くの中小企業経営者は、幻想のようなものをもっています。
それは、
厳しいこと・辛いことを乗り越えてこそ、良い結果が得られる。
というものです。実際に、有名なスポーツ選手は、かなり厳しいメニューを日々こなしています。こうした努力があるからこそ、大きな大会で素晴らしい結果を残せるというのも事実です。
こうした認識が私たちにも強く印象付けられているために、
- 周囲以上に努力をして当然。
- 厳しいことを言って、させなければ人は成長しない。
と考えてしまいがちですが、前提条件が、優秀なスポーツ選手と中小企業で働く従業員とでは、大きく異なります。それは、
仕事が好きでたまらないという気持ちで、就職した人は極めて少ない。
ということです。
物価高がすごいわ。
私も空いた時間を使って仕事をしないと、
生活が苦しいわ。
こういった方も多数いる組織なのに、社会的に「優秀だ!」「素晴らしい!」と認知されている人・団体と同じようなアプローチをすれば、同じ様な結果が出るとつい信じてしまうことがあるのです。
その結果、
おい!何度言えば分かるんだ。
お前は何年この仕事をしているんだ。
これでは全く話にならん。
やりなおせ!
こうした、厳しい言葉掛けをしてしまいがちです。
そして、こうした厳しい言葉を嫌だと感じる従業員に対して「熱意がない」「根性がない」と経営者は思ってしまうものですが、先にも触れたように、社会的に優秀だと言われる方と前提条件が全く違うことを見落としているのです。
苦しいままだと、なぜ、企業は成長できないのか?
この様なことがあると、従業員はどう感じるでしょうか。
もちろん、個人差は大きいですが、「仕事が楽しい」とは感じにくいでしょう。
また、社長は偉そうに吠えているなぁ。
これだから、嫌なんだよな。
やりなおせ!っていうのは簡単だよなぁ。
いつもそういうだけで、何がダメなのか、全然具体性がないんだよな。これじゃあ、どうやり直していいのか分からないよなぁ。
こうした「嫌だなぁ」「苦しいなぁ」という気持ちのままで、良い仕事ができるとは、到底考えることができません。これは、仕事に限らず、日常の風景からも明らかです。
来週の体育の時間は、持久走をするぞ。
体力は大事だからな。
3000m走りきれ!
こういったことを言われた経験は、あなたもあると思いますが、より良いタイムで走れるように数日前から練習を始めたでしょうか。一部には、そういった方もいるかもしれませんが、多くの人は、「疲れるし嫌だなぁ」「走らないと叱られるし、とりあえず走るしかないなぁ」という気持ちだったのではないでしょうか。
つまり、「やれ!」「やらないと〇〇させてやらないぞ!」などといった要素で、強制的に何かをさせることで、プラスが生み出されることはないということです。
ところが、私たち中小企業経営者は、先に触れた幻想「苦しいことに耐えてこそ…」に囚われがちになってしまっているのです。中小企業が成長に苦しむ要因は、様々ありますが、これも大きな要因の一つなのです。
【解決策】どうすれば、仕事が楽しいものになり、生産性が高まるのか?
「仕事が楽しくなる方法」などと言うと、「そんなの理想論だ!」と言われることがあります。
もちろん、私も「遊びに行くような感覚の楽しさ」とは全く性質が異なっていると考えていますが、ここでは、「もっといい仕事をするにはどうすればいいだろう?」と考えることができるようになることも「楽しさ」と捉えて話を進めます。
誰もが心の奥にしまっている想いがある
私の場合、関わりのある中小企業の従業員の方々と対話を行うことをとても重視しています。
「そんなことをして業績が伸びるのか?」
「社内の人間関係が良くなるのか?」
などと言われることがありますが、まずは、個々にもっている想い(本音)を聴き、組織が変化をするきっかけを探るのです。
この想い(本音)を聴くメリットは、大きく2点あります。
経営者・幹部からは見えない問題点が明確になる
いくら経営者が会社全体をしっかり見ているといっても、全てを把握することは非常に困難です。
実際に、私が従業員の方々と対話を行っても、
- Aさんは意外にもこんなところで悩んでおられたのか(全くそう見えなかった)。
- こんな些細なことだけど、同じところが気になるって方が多かった。
- Bさんは、いつも何も言わないけれども、とても会社全体のことを理解されているなぁ。
こうした意外な発見というのは、たくさんあるものです。
もちろん、発見したことは、経営者に伝えるようにしていますが、経営者も「それは盲点だったなぁ」と言われることも珍しくありません。
人は自分を理解してもらうことに喜び、理解してくれる人に貢献しようとする
人は、「承認欲求」をもっていることは、よく知られていることです。
例えば、次のような場面で、どちらの言葉の方が従業員は頑張ろうと思えるでしょうか。
ちょっと営業成績が伸びたなぁ。
でも、まだまだ半人前だ。
調子に乗らず、気を引き締めて頑張れ。
少し営業成績が伸びてきたな。
手間暇がかかったかもしれないけれど、お客様のところにマメに足を運んだからじゃないかなぁ。地味な努力が実を結んだな。
当然、後者の上司の言葉の方が「やる気が出る」でしょう。
それは、後者の上司は、目立たない地味な努力のことも理解しており、それを取り上げて認めてくれたためです。人はこの様に承認してくれた人に対して貢献したいと思う「貢献欲求」ももっているために、それもを引き出すためにも。想い(本音)を聴くことはとても重要なのです。
このことをまずは、経営者・幹部の方が理解をし、「従業員を承認する、または尊重する意識をもちながら、日々接することを意識していく」ということが最初の段階となります。
私の経験上、この段階が実践できるようになるだけでも、組織は大きく変容すると断言できます。
小さな成果を喜び合える企業体質を作る
経営者や従業員の想い(本音)を聴くことで、見えにくい問題点も明らかになることは先に紹介しました。当然、この本音の中には、「人間関係」に関わることもたくさん出てくるものです。
この「人間関係」の問題は、解決が困難なものもあれば、簡単に解決できるものもあります。
実際には、簡単に解決できるものを先に解決しつつ、どうしても時間が必要なものを改善していくという流れになることが多いです。具体的には、
- 従業員の評価基準を議論し、整備する。
- 従業員の感じている問題点を出し合い、議論する場を設ける。
- 営業的な戦略について話し合う機会を設ける。
ただ、こうした取り組みをするには、事前段階の準備が重要となります。
準備が整っていない段階で、新しい取り組みをしようとすると、必ず反発がおきるもので、それは、あなたもこれまでに何度か経験されたことがあるでしょう。
みんなが日々感じている問題点を出し合ってもらい、
その問題点を解決していきたいんだ。
そういう場を月に一度、設けることにした。
また、そんなことを言って。
現場はとにかく忙しいんだよなぁ。
問題点は、社長が現場のことを理解していないってこと。
でも、そんなこと言えないじゃないか。
こうなってしまうのが現実ですから、新しい取り組みをするにしても、少なくとも数名が前向きな気持ちになるような準備をする必要があるということです。
ここに例として挙げた取り組みは、実際に私が関わっている中小企業で実践されていることですが、こうしたことが継続的に実践できているということは、組織全体の意識がポジティブな状態であると見ることができます。
では、どうしたら、従業員が前向きな気持ちになるのか?
従業員を対象とした研修などを行うこともありますが、対話を行うことが大切だと考えています。
ところが、実際には、経営者が従業員とじっくりと対話する時間がとれないことがほとんどであるために、私が代わりに対話を行い、その中で従業員の方々にも長期的な視点がもてるような質問を行っています。
従業員もある程度の経営感覚を身につける
最終的には、従業員の方々にも「経営感覚」をもってもらうことを目標としています。
具体的には、次のような感覚をもってもらえるように働きかけています。
- 職場の人間関係がよくなるために何ができるか考える。
- 売り上げがさらに伸びるにはどうすればいいのか考える。
- 効率的に仕事ができる方法・アイディアがないか模索する。
冒頭で触れましたが、従業員の方に「こうしたことを考えろ!」と言うと、大きな負担となり、強い反発が起きて当然です。ところが、この様なことを考えなさいと言われなくても、日頃から考えている従業員の方も存在するのも確かです。
私の場合は、従業員の方々との対話を通して、自らこうしたことを考えている方を2〜3名取り上げて、この意識をもつ楽しさや満足感を波及させるという形をとって、少しずつですが、従業員の意識を変容させていくという形で実践を行っています。
ここでは、取り組んでいる内容の極一部しか触れられませんでしたが、何を重視しているかが伝われば幸いです。
万能な戦略・方法が存在しないから「人」そのものにフォーカスする
なぜ、ビジネス戦略的なことも行っているのに、戦略的な話はあまりしないのですか。
じつは、こういった質問を受けることがありますが、私にとって、ビジネス戦略は、短期的なものだからです。
例えば、斬新なアイディアで宣伝を行ったところ、「売り上げが大きく伸びた」ということが起きることは珍しくありません。だからと言って、そのアイディアが今後も通用し、末長く恩恵をもたらし続けることは、滅多にありません。
つまり、中小企業が業績を伸ばし続けるには、
- 自分たちでより良い仕事をする方法を考え続ける力。
- 自分たちで、売り上げ・利益が伸ばせる方法を生み出す力。
- 自分たちで、より企業にあった人を採用する力。
をもたない限り、企業成長をし続けることはできません。
そのため、私は何よりも働く人が大切だと考え、人にフォーカスした取り組みを行っているのです。
ところが現実には、こうしたことを十分に理解されていても、中小企業の経営者はあまりにも多忙なため、「分かっているけれども実践できない」ということもたくさん存在します。
それでは、あまりにも勿体無いために、私も関係企業に入り「経営者の方と共に実行に移す」ということをおこなっているのです。
具体的に、どのくらい「共に実行」しているのかは、 【事例・サービス】行動に移すことが難しいからこそ、ここまでやる!の記事を参照してください。