

町野文孝
株式会社インターテック代表取締役・心理資本経営コンサルタント
これまで自身の中小企業経営の経験を活かし、様々な中小企業の人材育成・組織開発に関わる。方針を打ち出すだけではなく、自ら、企業に入り込み、従業員の方々とも対話を行いながら、組織を作りを行っている。
これまでに、関わった全ての中小企業は、現在も業績を伸ばし続けている。心理面がメインに感じられることも多いが、財務に関するプロでもあり、数々の資格を有している。
「社員が一丸となって…」なんて話をよく聞きますが、そんな状況とは程遠いなぁ。
経営者だから仕方ないのかもしれないけれど、従業員との距離も感じ、空回りしている感じがします。
昔から「経営者は孤独なもの」なんて言うじゃないか。
従業員との距離があって当然なんだよ。
こういった話はよく耳にするものです。もちろん、「経営者が孤独であれば、事業が成長する」なんていう法則もありません。ですから、私の場合は、こういった話を耳にする度に、具体的な解決策を提案してきました。
今日は、
あなたが慕われる経営者・上司になれば、企業は必ず成長できる!
と言える理由と具体的な方法について解説します。
中小企業の経営者・上司は、「従業員に慕われたい」と思っているものです。その一方で、心のどこかで、「俺が毎月給与を支払ってやっているんだ」という気持ちもあるものです。
今のあなたのように冷静な状態では、「傲慢な気持ちでは事業はうまくいかない」と分かるのですが、日常の忙しさの中に入るとついつい冷静な判断ができなくなってしまうこともあります。
ここでは、まず、経営者や上司として慕われない人やってしまいがちな行動を紹介します。
従業員が一生懸命仕事をする理由の一つに「お金を稼ぐため」というものがあります。ですから、給与を上げる(昇給)とやる気が出ると思い込んでいる経営者は意外と多いものです。
もちろん、従業員にとって給与が上がることは嬉しいことですが、「給与を上げてくれた素晴らしい社長」という認識になることは、滅多にありません。増してや、「給与を上げてやったんだ!」という傲慢な気持ちが見え隠れすると、やる気を削ぐことにもなりかねません。
なかなか厳しい状態だけど、君には期待して給与をUPしたぞ。
これまで以上に頑張ってくれよ。
給与をUPさせるといのは、意外と大変なことなんだぞ。
ありがとうございます!
これからも頑張ります。
言葉ではこう言いながらも、内心は…
こういった気持ちになる場合もあります。きっとあなたも従業員として働いている時に同じ様なことを感じたことがあるはずです。
従業員のやる気とお金の関係については、仕事に対するやる気の根源は?「報酬」or「やりがい」?の記事を参考にしてください。
経営者・上司として慕われるのに「いい人」である必要があると思われている方も多いものです。ただし、「いい人」がある故に、結果として慕われない状況になってしまうこともあります。
この仕事、社長のところにお願いしてもいいですか。
少し専門分野とは異なる気がしますが、
どこにも相談するところがなくて…。
申し訳ないですがよろしくお願いしますよ。
困った時は、お互い様じゃないですか。
確かに弊社の専門ではありませんが、なんとかやってみましょう。
お互い長いお付き合いじゃないですか。
ビジネスの基本は「顧客の悩み解決」ですから、この場合、社長の判断は基本に忠実なのですが、ある会社では、次の様なことになってしまいました。
社長が変な仕事を受けてしまったみたいなんだ。
お得意さんだからって言っていたらしいけれども、提案を作るの大変だ。
しかも、利益はほとんど見込めない価格だ。
えぇーーー。
今はA社の仕事がたくさんある状態よ。
その上に専門外の仕事をするなんて、どうするのよ!
社長、いい人なんだけどなぁ…。
これでは、従業員のモチベーションが上がらないのも当然です。社外からは「いい社長・いい上司」という評価であっても、従業員は苦しく、「慕う」という気持ちは芽生えてきません。
多くの経営者・上司は、従業員に甘えているとは、思っていません。どちらかと言えば、従業員が自分たちに甘えているという感覚になりがちですが…
ちょっとごめん。
どうしてもやってしまわないといけない事があるから、会議の開始を30分遅らせてくれないか?
その案は本当に真剣に考えたのか?
〇〇についてはどうだ?そこが不十分だ。
もう一度、考えてくれるか。
あなたは、こういったことを従業員に言ったことはないでしょうか。
顧客に対しては滅多にしないことを、従業員に対してはついつい言ってしまうということがあるのではないでしょうか。また、難しいと思うことは、従業員に任せっぱなしにするということもあります。
そんな場合、従業員は、こんなことを感じているはずです。
こうしたことは、経営者・上司が従業員に甘えている現象と言えます。
以上、中小企業の経営者、上司に見られるありがちな良くない行動を挙げてみましたが、具体的な改善策はあるのでしょうか。私の経験をもとに、具体策を紹介します。
もし、あなたが慕われる経営者・上司になりたいのなら、
〇〇さんがそういうなら仕方がないなぁ…
と思われる人になることを目指すしかありません。先に良くない事例として挙げた3点では、〇〇さんがそう言うなら仕方がないなぁ…と気持ちになりにくいことが分かるはずです。
では、具体的にどうすれば、慕われる経営者・上司になれるのでしょうか。
先に例として挙げた3点を実行することも、経営者・上司にとっては大変な場合もあります。ただし、この様な大変なことをしたからと言って、慕われるとは限らないということを認めることが大切です。
俺だって、毎日必死で頑張っているんだ。
お前らも頑張れよ。
給与を支払うっていうのも大変なんだぞ。
こんなことを何度呟いても、従業員はあなたを慕うことはありません。日頃の自分の言動が、慕われる言動になっているか、冷静に振り返ることが大切です。実は、この部分が大変なだけで、この習慣さえ身についてしまえば、多くの場合、慕われる存在へと変化していくことができます。
私が直接関わっている中小企業の経営者の方も、最初は「従業員のことをとにかく第一に考えている」と言われていましたが、ご自身の行動を振り返る様になってからは、「従業員のことをちゃんと理解できていなかった」と言われる様になりました。
いくら経営者であっても、仕事以外の場面で人と関わることがあります。そう言った場面でも、話を聴き、共感をすることを意識したいものです。
よく耳にするのは、
〇〇さんは、お客様の話には耳を傾けるが、従業員の話にはなかなか耳を傾けてくれない。
というものです。あなたは、こうした二面性をもっているような人を心から慕うでしょうか。従業員に心から慕われることを目指すのであれば、「お天道様は見ている」という意識を常にもっておくべきなのです。
最初はなかなか上手くできなくても、どんな場でも、よく聴き・共感することを大切にしていると、それは必ず人柄として滲み出てくるものです。
まずは、この2つのステップを意識し続けることが重要です。従業員の本音が聞けるようになって、はじめて問題の本質的な改善策を考えることができる様になるのです。反対に、本音を引き出せないまま、問題の改善策を考えても、その策はどうしても一時的なものになってしまうということは、あなた自身が良く知っているのではないでしょうか。
上記の動画の会社は、事業承継を視野に入れた新しい体制での仕事がスタートしています。
表具(ふすま・障子など)を取り扱った会社なので、時代の流れを考慮すると、非常に厳しい状況になるだろう…と考えるのが通常だと思います。
ところが、実際には、
赤字→黒字になるくらいに企業は伸びた
のです。なぜ、この厳しい状況でも成長することができたのか? 一言で言うと、
次期社長が自ら頑張っているのだから、自分たちも頑張ろう
(社長がそういうのなら、仕方がないなぁ)
こうした心情から生まれる良いサイクルを作り出すことに成功したからです。
このサイクルを生み出すために、次期社長は何をされたのか簡単に紹介します。
どれも基本的なことばかりかもしれませんが、基本を疎かにせず、丁寧に見つめ直すことに快く賛同していただき、私と共に事業について真剣に考えていただいた結果だと思います。
会社は日に日に成長をし、社風もガラリと変化しましたので、これからが益々楽しみになってきました。良いサイクルが生まれると、成長は加速度的に伸びていくものです。
ここでは、簡単にしか触れられませんでしたが、もう少し具体的にどうされてきたのか?後日、改めて紹介したいと思います。
今日、お伝えしたことの一部でも参考になる点があれば幸いです。
30年以上、中小企業経営を行っている。その間に大成功もおさめた一方で、離職などの影響もあり、経営の危機を何度か味わう。そこから再び這い上がりながら、「良い中小企業経営の形」を徹底的に追究。
現在は、自身の実践をもとに東海地域の中小企業経営のサポートを行い、関わりのある全ての会社の業績向上を達成し、採用に貢献。