【中小企業の事業成長】やらないことを決めて実行に移す必要性(身近な事例も紹介)

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町野文孝

株式会社インターテック代表取締役・心理資本経営コンサルタント

これまで自身の中小企業経営の経験を活かし、様々な中小企業の人材育成・組織開発に関わる。方針を打ち出すだけではなく、自ら、企業に入り込み、従業員の方々とも対話を行いながら、組織を作りを行っている。
これまでに、関わった全ての中小企業は、現在も業績を伸ばし続けている。心理面がメインに感じられることも多いが、財務に関するプロでもあり、数々の資格を有している。

事業承継をするには、承継者の意思も重要ですが、その前に「財務状況」も非常に重要であることを、【事業承継の事例】長期的な視点をもつことの重要性(事例から解説)の記事で解説しました。

中小企業経営者

財務状況が大事ってことは良く分かるけれど、問題は「どうしたら財務状況が良くなるか?」ってことなんだよなぁ。

こんな話は、中小企業の経営者と話をすれば必ず出てきます。私自身も、この問題には散々悩まされてきました。もちろん、この問題の答えは1つとは限りません。様々なアプローチが考えられますが、最も重要なことは、

誰もができないことを社内全員で取り組む。

ということです。一見、矛盾した様なことを言っていますが、

自社の商品・サービスに対して付加価値をつける

ということです。「そんなことは分かりきっている!」と言われることもありますが、問題は、どうしたら自社の商品・サービスに対して付加価値を付けられるか?という点です。この点に対して具体例を挙げながら詳しく解説します。

目次

STEP1 やらないことを決める

自社の商品・サービスに付加価値を設けるために、

何をやらないのか決めること

これはとても大切なことです。とは言っても、こんな話は書籍やセミナーなどでも良く耳にしますから、「そんなことは分かっている!」という声も聞こえてきそうです。それでも、敢えてこの話をするのは、「分かっている・知っているからできる」とは限らないためです。

ダイエットが良い例でしょう。「ダイエットをするなら、食事に注意し、適度な運動をする必要がある」と誰もが知っています。でも、実際に行動し続けることは難しいものです。

やらないことを決めることは、難しい

中小企業の経営者は、「良い人」が多いです。長く仕事をされてきただけあって、基本的には、「お客様が喜ぶことをするのが仕事」という考え方が染み付いていると感じることが多々あります。これは決して悪いことではありませんが、注意したい点があります。

例えば、

安くて早く食べることができる「立ち喰い蕎麦屋」を経営していたとします。
この時、お客様から「値段が高くても、時間がかかってもいいので、高級な蕎麦が食べたい」と要望があれば、これに応えようとするでしょうか。

きっと、多くの方の答えは「No」だと思います。

その理由は、確かにそうした要望があったとしても、オーダーが入ってから時間を掛けて調理をし、お蕎麦を提供することは、立ち喰い蕎麦屋の理念・存在意義に反するからです。

ここでは、非常に分かりやすい例を挙げましたから「No」という答えが直ぐに出ましたが、一般的な中小企業の場合、取引先のニーズに応えようと努力されるケースは多々あります。

状況によりますが、自社の商品・サービスに対して付加価値をつけるためには、思い切って「No」ということも大切です。なぜなのか、詳しく解説します。

やらないことを決める必要性

先ほどの「立ち喰い蕎麦屋」の場合でいうと

  • 電車の待ち時間の間にパッと商品を提供して食べていただく。
  • 安い。

これが、商品・サービスの付加価値な訳ですが、ここで、クオリティーの高い蕎麦も提供するとなると、他の安い商品を提供する時間が伸びてしまう可能性が考えられます。そうなると、「立ち喰い蕎麦」の付加価値は下がってしまいます。

もちろん、従来の商品の提供時間には全く影響を及ばさないようにする工夫を考えることもできますが、こうした工夫を考えるのであれば、従来の商品を今まで以上に早く・安く提供できる工夫を考えた方が、価値が高まるのではないか?という考え方をしたいものです。

こう考えると、やらないことを決めて、すでにある商品・サービスの価値をより高めることに労力を注ぐことの大切さが見えてくるはずです。

STEP2 やらないことを段階的に実行に移す

いくら理屈で、「やらないことを決める大切さ」が分かっても、それを実行に移すことは、経営者にとって恐怖でしかありません

一般的な中小企業の経営を見ても、事業規模を拡大する話は良く耳にしますが、事業規模を縮小する話は拡大に比べて圧倒的に少ないのが現状です。ですから、商品やサービスの提供についても、「やらないこと決めて実行に移す」ことはとても難しいことは、私自身、痛いほど良く分かります。

では、どうすればいいのでしょうか。

段階的にやらないことを増やす

人には、生命を守るために「怖い」という感情があります。中小企業の経営で命を落とすという可能性は低いですが、あなたが直感的に感じた「怖い」という感情は、大切にして欲しいと思います。

では、「怖い」という感情を克服するにはどうすればいいのでしょうか。

スキーのジャンプ競技をしている人は、どの様に練習しているのでしょう。

テレビなどで、スキーのジャンプ競技を見ると「人間のすることではない!」と思えるくらいのことを選手の方々はされています。私たちが突然、あの様なことをさせられるとなれば、恐怖で足が震え、精神状態もおかしくなってしまうでしょう。

当然、選手の方々だって「初めて」の時があった訳で、次の様な練習をして次第に飛行距離を伸ばしていくそうです。

  • 小さなジャンプ台を乗り越える様なイメージで練習。
  • 転倒してしまった時の練習。
  • ジャンプ台を少しずつ大きくしていく。

ここでは、非常に簡単に整理しましたが、いきなり目標に近いことをするのではなく、段階的に目標に近づく練習をされていることが分かります。

中小企業の経営において、「やらないこと」を決めたからと言って、「突然、全くしない」という方針に変える必要はありません。段階的にやらない方向にもっていければいいですし、場合によっては、途中で、方向性を変えるという柔軟さも持っておきたいものです。

例えば、「立ち喰い蕎麦屋」で、「にぎりたてのおにぎりを出さないようにしよう」と仮に決めたとしても、ある日突然「おにぎりの販売は行いません」とするのは、とても怖いものです。

ですから、

  • おにぎりの種類を減らして様子を見る。
  • 「にぎりたて」は辞め、作り置きのおにぎりに変えて様子を見る

こうした段階を踏んで、今後どうするか検討することを考えていけばいいのです。冷静に「やらないこと」を見ていくと、この様な計画を立てることは当然のことの様に見えますが、実際に様々な中小企業の様子を見ると、この計画がない場合が圧倒的に多いのが現状です。

計画がないということは、「やらないこと」を実行に移すことが難しく、結局、忙しすぎる日々が続き、本来最も大切にしないといけない商品・サービスの付加価値が十分に高められていないというケースが多々見られます。

「怖い」という感情について詳しくは、【中小企業の従業員のやる気】やる気について学べば学ぶほど陥りやすい罠の記事で解説しています。

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STEP3 有名企業などの事例から勇気をもらう

「やらないことを実行する」のは、大変なことですが、これを実行に移し、自社の商品・サービスの付加価値を高めている事例はたくさんあります。また、これまでに、あなた自身がやらないことを実行して大きなメリットを受けた経験もあるので、それらを紹介します。

深夜でも営業をしている銀行がしている「やらないこと」

アメリカには深夜でも窓口営業をしている銀行があります。深夜でも窓口営業をすることは、コストがかかりますから、その代わりに「預金利息をつけない」と明言しています。

預金利息が貰えない銀行なんて何のメリットもないじゃないか?

通常、この様な発想になりますが、

  • 深夜でも銀行窓口が利用できる便利さ。
  • フレンドリーな雰囲気での対応。

を売りにして、顧客を獲得しています。利用者の考えようによっては、「少しだけ貰える利息を犠牲にしてでも、深夜に相談できる窓口があった方がお得ではないか?」ということになります。

やらないことを実行に移したからこそ、商品・サービスの付加価値を高められた事例だと言えます。

サイゼリアの料金設定は多くの価値を生む

100円・50円単位の料金設定をしているサイゼリア

イタリアン料理がお手頃価格で食べられる「サイゼリア」。ざっくりと料金を見ると、百円単位または50円単位で統一されていることが分かります。つまり、

一円単位の細かい料金設定が廃止されている。

ということが分かります。古くから「400円と表記するよりも398円にした方が買われる可能性が高い」と言われ続け、現代でも多くのお店で、1円単位で料金設定が行われているにも関わらず、なぜ、サイゼリアは、この鉄則を廃止したのでしょうか。

よく考えると、これには様々なメリットがあります。

  • 準備しないといけない金種(硬貨)の種類が少なくて済む。
  • お客様もお店側も細かいお金を扱わないために、現金での支払いがスムーズ。
  • お客様が暗算で料金を計算しやすい→追加注文をする・しないを決定しやすい。

こうしたメリットが考えらえます。このメリットは、利用者にとっても大きな恩恵だと言えるでしょう。

【ほぼ全員が経験】服を選ばないという選択肢

多くの中高生は、制服を着て登校します。「制服がかわいい・格好いい」などの声はありますが、制服があることで、

着て行く時の服を選ぶ必要がない。

ということです。お洒落が好きな方にとっては、堅苦しい制服ですが…

  • どの服を着て行こうか考える時間が要らない。
  • 服を買いにく頻度が格段に少なくなる。

このメリットは相当大きなものだったと思います。スティーブ・ジョブズ氏は常に同じ服だったことは有名ですが、彼は、ビジネスに専念するために、服を選ぶという選択肢を捨てたと見ることができます。

こうした事例は、あなたの周りにもたくさん転がっています。「やらないことを決め、実行する」ことは断腸の思いかもしれませんが、ご自身で事例を見つけることで、実行力が高まるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

30年以上、中小企業経営を行っている。その間に大成功もおさめた一方で、離職などの影響もあり、経営の危機を何度か味わう。そこから再び這い上がりながら、「良い中小企業経営の形」を徹底的に追究。
現在は、自身の実践をもとに東海地域の中小企業経営のサポートを行い、関わりのある全ての会社の業績向上を達成し、採用に貢献。

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