【事業承継の事例】長期的な視点をもつことの重要性(事例から解説)

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町野文孝

株式会社インターテック代表取締役・心理資本経営コンサルタント

これまで自身の中小企業経営の経験を活かし、様々な中小企業の人材育成・組織開発に関わる。方針を打ち出すだけではなく、自ら、企業に入り込み、従業員の方々とも対話を行いながら、組織を作りを行っている。
これまでに、関わった全ての中小企業は、現在も業績を伸ばし続けている。心理面がメインに感じられることも多いが、財務に関するプロでもあり、数々の資格を有している。

日々、様々な中小企業の経営者の方と話をしていますが、「事業承継」に関する話題になることも多々あるものです。

中小企業経営者

今は、おかげ様で事業の方はうまく行っていますが、私もそれなりの年齢です。これから会社をどうすればいいのか、かなり悩んでいます。

似た様な悩みを抱えている中小企業は非常に多いかと思います。そこで、今回は、私が「事業承継」を視野に入れて、組織づくりに関わっている会社の事例を紹介します。一部でも参考にしていただけたら幸いです。

目次

事業承継のことが気になる主な要因3つ!

「事業承継」をスムーズにするには、その障害となる要因を理解することが重要です。ここでは、私がこれまで関わってきた中小企業の実態から、事業承継の障害となる要因を簡単に紹介します。

ここで紹介するものは、全体的に多いと感じた要因です。そのため、企業によっては、該当しないものがあったり、別の要因が考えられる場合もあります。

親族に事業承継者がいない(財務的な問題)

事業承継は、必ずしも親族に継承しないといけない訳ではありません。ところが、

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財務状況が良くない(借り入れ残高が大きい)

この様な場合、継承者が背負うものがどうしても大きくなってしまいます。他人が、「自分の財産を担保にしてでも事業を継承したい」という可能性は非常に低いと言っていいでしょう。

そうなると、「親族に事業を承継する」という形を取らざる得ないのですが、親族に継承の意思があるとは限らないのが現状です。

経営者の仕事と従業員の仕事のギャップ

経営者が、事業を承継する際に最も気になる点は、

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事業の承継後もきちんと企業経営ができるか?

ということに尽きます。いくら優秀な従業員がいても…

  • 会社経営の能力
  • 従業員・現場で働く者としての能力

これらは全く違うために、簡単に「後は任せた!」とは言えない訳です。ところが、特に中小企業の場合は、日頃の業務がどうしても優先され、承継者の経営能力育成が後回しになりがちになってしまいます。

精神的な強さが求められる

中小企業とは言え、事業の承継者になるということは、上の立場になるということです。従業員数が少なくても仕事に対する考え方は、個々様々であり、それらに対して応えていく必要が出てきます。

具体的には、次の様な要望を次々と聴く必要性が出てきます。

  • もっと時間的な余裕を作って欲しい。
  • 効率的に仕事ができる様な工夫を考えたり、設備投資をして欲しい。
  • 給与を上げてくれないか。など…

様々な要望が出てくるのは当然であり、経営者に対する不満が爆発することだってあります。こうしたことも乗り越える必要があります。

では、こうした問題を克服するには、どうすればいいのでしょうか。

現在、事業承継を視野に入れて、準備を進めている中小企業の例を具体的に紹介します。

【具体的事例】事業承継を視野に入れて準備を始めている中小企業

今回紹介する事例は、名古屋市内で、医療機器の電子部品を製造している株式会社エム・オー・シーです。従業員は20名程度で、小さな会社ですが、確実に収益は伸び、事業承継の準備が着々と進んでいます

  • どの様にしてこの様な状態を作ったのか?
  • これからどの様に事業承継へ結びつけるのか?

これらについて解説します。

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事業承継に向けた取り組みには、長期的な視点が必須

まずは、このことを念頭に入れておきたいものです。

事業承継の準備に入る前の段階で行なったこと

株式会社エム・オー・シーの場合、様々な事情から「承継者は親族ではなく、従業員の中から」という希望でした。

つまり、

  • 現在の財務状況が良好であること。
  • これからの事業もある程度収益が見込める状態にある。

これらをクリアしないと事業承継の準備に入りにくいということになります。ところが、最初からこの様な状態を最初から作り上げている中小企業は、そう多くはありません。

幸い株式会社エム・オー・シーの場合は、現在の財務状況は非常に良好だったために、「これからの事業の発展性」が課題となりました。そこで、次の様な対策をとることにしました。

  • ホームページを新しくし、海外からの閲覧にも対応させる。
  • プレスリリース(メディアを利用した発信)
  • 行政・商工会等が行う発信にも参加できる形を整える。スト

これらの取り組みに対しても反応が得られる様になってきましたので、次の段階に入ることが可能となりました。

言葉で言うのは簡単ですが、未来への展望が持てるように準備をすることは、事業承継をする上で非常に重要なポイントとなります。また、これらの準備をし、それなりの反応が得られる様になるには、早くても半年〜1年くらいの期間は必要だということも念頭に入れておきたいものです。

経営者の仕事と従業員の仕事とのギャップを埋める

次に、経営者の仕事と従業員の仕事のギャップを埋める必要があります。こう言うと、

日々の業務をマニュアル化すればいいんじゃない?

と言われる方もいらっしゃいますが、そう簡単なものではありません。その理由は、

  • 顧客との信頼関係をどうやって構築するか。
  • 時代や社会の変化を理解して、顧客がどの様な製品・サービスを求めているか。
  • 従業員はどの様な環境を求めているのか。
  • どのポイントで利益を確保するのか。

など…明確な答えがないことを経営者は考えているために、経営者の業務を全てマニュアル化することができません。その為、

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経営者としての視点をもつ練習をする期間を設ける。

必要があります。この期間にどの様な事を承継の候補者に伝えるのか、計画を立てていく必要があります。株式会社エム・オー・シーの場合は、現在、この計画を立てながら、できることから実践している状態です。

極一部ですが、具体的にどの様なことを計画しているのか簡単に紹介します。

異なる部署で仕事会社全体の業務の実態を把握する。
それぞれの部署で働く人の願いや現在の課題を理解する。
得意先に出向顧客のニーズをより深く理解する。
人間関係を構築し、信頼関係を築く。
同業他社等と関係を築く業界の動向を理解する。
共同開発などの様な事業の広がりの可能性を探る。
技術力の向上自社の技術力向上に向けて学ぶ。
ビジネス英語の習得海外進出を視野に入れて、基本的なビジネス英語を身につける。

現場で技術者として働く場合と、学ぶことが全く違うことが感じられると思います。また、これらのことを十分理解するには、それなりの年月がどうしても必要だということが分かると思います。

また、こうしたことを教育する過程の中で、承継予定者だけでは、どうしてもカバーしきれない部分が出てくる場合もあります。そんな時には、チームを編成することも考える必要が出てきます。

一人で全てができないのであれば、複数人で会社経営の舵取りをすることも視野に入れる。

つまり、効率的に事業承継するのであれば、その準備期間にどの様なことを取り組むのか綿密に計画を立てる必要があります。とは言っても、通常の業務をしながら、経営者がこの計画を立てることは困難であるために、私はこれまでの経験を活かして提案をしているのです。

承継者のメンタルを整える(実は社内全体を整えることが大切)

先にも触れましたが、承継者にはある程度のメンタル的な強さが求められます。

とは言うものの、私は「承継者のメンタルが強くなれば良い」とは、考えていません。人が集まれば、その数だけ異なった考えが生まれて当然です。その為に、意見がぶつかることはあっても、お互いに心地よく目標に迎えるような社風を作ることが大切だと考えています。

つまり、

  • 経営者・承継者のメンタル的なケア
  • 従業員の想い、現在抱えている課題

どちらも重要だと考え、実際に経営に関わる人の想いだけを聞くのではなく、従業員の方々の想いを聴いています。どうすれば、お互いに心地よく接することができるのか?この答えは難しいかもしれませんが、【中小企業の従業員のやる気】やる気について学べば学ぶほど陥りやすい罠の記事がヒントになると思います。

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こうして、事業承継までの道のりを見ると、

Check!

事業承継までの過程=健全な中小企業の経営戦略

と言うことができそうです。

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この記事を書いた人

30年以上、中小企業経営を行っている。その間に大成功もおさめた一方で、離職などの影響もあり、経営の危機を何度か味わう。そこから再び這い上がりながら、「良い中小企業経営の形」を徹底的に追究。
現在は、自身の実践をもとに東海地域の中小企業経営のサポートを行い、関わりのある全ての会社の業績向上を達成し、採用に貢献。

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