【何度も同じ失敗をしてしまう!】そんな部下をどう教育するのか?意外な対応策とは?
とくに中小企業の場合、経営者・上司の雰囲気が悪ければ、その空気感は一気に社内に広まってしまいます。
今日は、朝から社長の機嫌が悪いぞ。
とにかくこれ以上、機嫌を損ねないように気をつけよう。
こんなことは、あなたもこれまでに何度に思ったことがあるはずです。
ですから、「自分が出す雰囲気が悪くならないように意識している」と言われる経営者がかなり増えてきた様に感じます。また、私は会議の際にもダメ出しをする様な発言は良くないということを関わりのある全ての経営者にお伝えしています。
詳しくは、【適切な会議とは?】中小企業が陥りやすい会議の問題点と解決策の記事をお読みください。
とは言っても、常にいい雰囲気を維持することはとても困難です。先日もある中小企業の経営者の方からこんな質問をいただきました。
自分の出す雰囲気が業績に大きく影響するということは、身をもって経験しました。一つ一つの言葉にも目が行く様になり、感謝していますが、「何回同じ失敗をするんだ!」と叫びたくなる従業員もいるのが現状です。
だからと言って、私が声を荒げるのは絶対に良くありませんが、かと言って、放置する訳にもいきません。
こんな時にはどう対応するのがいいのでしょう。
全く同じ様な悩みは、これまでにも何度も聴いてきましたので、同じ悩みを抱えている経営者の方も多いと思います。そこで、私自身の経験をもとに、最近、中小企業の経営者の方にお伝えしていることを紹介します。
一部でも参考にしていただけたら幸いです。
【傾向】そもそもなぜ同じ失敗を繰り返す人がいるのか?
通常、人は失敗をしながら多くのことを学んでいきます。
〇〇をして失敗してしまったのだから、今度は△△でアプローチしてみようなどと考えるものです。ところが、今回、相談があったケースは、〇〇で失敗したのに、また別の機会に〇〇をして失敗をするということが繰り返されていたのです。
なぜ、この様なことをしてしまう人とどんどん改善していく人がいるのでしょうか。
私は様々な中小企業の組織づくり・人材育成に関わっているので、これまでにも相談があった企業の従業員の方々と繰り返し話をしてきました。その結果「何度も同じ失敗をしてしまう方」には次の様な傾向が見られました。
失敗の原因は自分ではなく、会社の体制などが問題であると考える
失敗の原因は、会社にある。
こう考える方が多く見られました。具体的には次のような意見です。
- 今回の失敗は会社にとって大きな痛手となるが、なぜ、こんな失敗に繋がったのか経営者自身が考えていないのが問題だ。
- 途中経過も適宜報告していたが、適切なアドバイスが無かったのが失敗の要因だと思う。
- いつも「チームプレーが大切だ」と聞かされているが、大変なことは個人に押し付けているのが現状なので、この体質を変えない限り問題は解決しない。
評価に似合った仕事しかしたくないと考えている
また、給与・評価に問題があるという声も多いのが現状です。
- こんな安月給で人を雇って、重たい責任を負わせていることが問題である。
- 自分自身は会社に貢献したいと日頃から考えているが、適切な指示がない上に、経験や技量を評価して貰えていない。これではやる気が失せてしまう。大きな仕事を任せて、結果を求めるのであれば、その前にしっかりとした評価をするべきだ。
確かにこうした気持ちも分からないでもないですが、誰かのせいにしている限り、失敗は改善されないだろうと私は思います。
経営者の方々が「何度同じ失敗するんだ!」と言いたくなる気持ちも十分に分かります。では、こう言った方々にはどの様に対応をすればいいのでしょうか。
【対策】時にはあきらめ、周りから固めていく
実は、私自身も経営者として同じ悩みを何度も抱えたことがあります。そして、
- 何度も1on1で話し合う。
- 威圧的な姿勢で、行動改善するように指導する。
- 問題となっている人と人間関係が良さそうな人を介して、指導をして貰う。 など…
様々な方法を試してみましたが、残念ながら人間関係が悪化してしまうということが多くありました。つまり、これらの方法は、計画的に実践しても「何度も同じ失敗を繰り返す人に対しては効果が期待できないということです。
そこで、最近では…
問題のある人に深く関わることを諦めて
周りの人(やる気のある人)の状態を整えることに全力を注ぐ
ことにしています。もちろん、時間はかかりますが、これまで「周りのせい」にしていた人にも変化が見られる可能性が高くなってきました。どういうことか解説します。
メリット1 社内の雰囲気を大きく壊すことがなくなる。
誰でも、同僚が上司に厳しく叱られているのを見るのは嫌なものです。
問題のある人に対して直接的なアプローチをすることを辞めると、大きな声を挙げる必要性がなくなります。つまり、社内の雰囲気を大きく崩してしまう機会が激減します。
そうは言っても、問題のある人を放っておく訳にはいかないだろう。
私自身、何度もこう思ったことがありますが、大きな声を挙げた時の損失の方が明らかに大きいので、直接アプローチすることを最近では辞めています。
問題を放っておく訳にはいかないですが、まずは、現状を確実に維持することに注力した方が会社全体としては得策だと考えています。
メリット2 教えるよりも「気付く」アプローチができる。
また、多くの人は、他人から指示されることをあまり好みません。
今日はとにかく、書類の整理と作成だけをして欲しい。
例の企画については、どうしたらいいのかこちらで考えて、指示を出すから待っておくように。
時には、こうしたことも必要ですが、いつもこの様な形で「やるべきことの指示」ばかりされていたら、仕事は楽しくありません。仕事の楽しさは、「〇〇したらきっと上手くいくだろうなぁ」と考えて試し、何か新しい気付きを得るところにあるはずです。
そう言った意味でも、問題のある方に対しては、周りの環境を整えて、何か新しい発見がしやすいようにすることはとても重要です。
メリット3 小さな成功体験がよい循環を生み出す。
さらに、周りの環境を整えた結果、小さな成功体験ができた場合には、好循環が生まれやすいというのも大きなメリットです。次の2つは同じ結果でも、満足度が全く違うという点は大切にしたいものです。
- 社長や上司に言われた通りにしたら、新しい契約がとれた。
- 社長や上司にその都度相談する様にしたら、新しい契約が取れた。
表面的には同じ様な出来事ですが、本人からすると、圧倒的に後者の方が満足感が高く、自信にもつながりやすくなります。
実はある中小企業で、こまめに相談する社風を作った結果、それまでは、いつも周りの文句ばかり言っていた問題のある方も、ガラリと変わり、今では後輩に対して「言いにくいことこそ相談する価値がある。」なんて言われる様にまでなりました。
面白いことに、ご本人は自分自身が大きく変わったとは全く気付いていませんが。
人は環境によって「当たり前のこと」さえも大きく変わる
教育の分野でも「環境」の大切さは良く語られます。
私たちは日々当たり前の様に「いただきます」と言って食事を食べています。もちろん、食事の前に「いただきます」と言わないといけないと意識している大人はほとんどいないでしょう。
ところが、英語には「いただきます」という言葉はありません。ですから、「いただきます」という文化は、アメリカの人にとっては、不思議な光景ということになり、彼らがこの挨拶をするには、どうしても意識的にしないといけないのです。
こう考えると、社内の風土・文化というのは非常に重要な役割を果たしていると言えそうです。先に少し触れましたが、「気軽に何でも相談できる文化」が定着するだけでも、中小企業は大きく生まれ変わることができるのです。
確かに、こうしたことを創り上げていくには、それなりの時間がかかりますが、反対に創り上げてしまえば、そう簡単に崩れることもないだろうと想像できるのではないでしょうか。