【事例】みんなの考え(集合知)は意外にも正しい!製造会社の新しい第一歩
企業の成長は、経営者の判断によって大きく左右する!
とくに中小企業の場合、こうした考え方が当然のものとして根付いているように感じます。もちろん、経営者自身で様々な判断をしていくのも一つのスタイルですが、
みんなの意見は、優秀な専門家一人の意見よりも正しい!
ということも知っておきたいものです。これは、統計学的にもはっきりと証明されているものなので、ここで紹介することを会社経営・人材育成の場面でも活かして欲しいと思います。
みんなの意見は、優秀な専門家一人の意見よりも正しいとは?
みんなの意見が非常に優れているという有名な例を一つ紹介します。
瓶に入ったジェリービーンズの数を当ててみましょう。
56人の大学生が、ビーンズの数を推測し、平均値をとると871個でした。正解は850個だったのですが、平均値よりも正解に近い数値を提示した大学生は、たった1人しかいませんでした。
同じ実験を何度やっても…
みんなの平均値の方が個々に推測した数値よりも正解に近い
という傾向が見られたというものです。この実験から、みんなの意見をまとめていくと正解に近づけるということが、一般的にも言われるようになったのです。
偶然、そうなっただけじゃないの?
他の場面でも、同じ様なことが言えるのだろうか?
こう思う方も多いことでしょう。そこで、次の様なことを考えてみましょう。
どこにラーメン店を出せばいいのか?みんなの意見vs専門家の意見
あなたが新たにラーメン店を出店するとしましょう。その際、立地条件を考えることも重要です。
では、次のどちらの方が正解に近いと考えることができるでしょうか。
- 飲食店・ラーメン店の経営に詳しい専門家の意見
- Googleで「ラーメン店」と検索された地域ごとの検索数
私ならば、後者の資料を参考にします。実際にGoogleはこうしたみんなの意見をデーター化してコンサルティングサービスも行なっていますから、「みんなの意見」は参考になると言っていいでしょう。
もちろん、何でもみんなの意見が正しいとはならないこともありますが、中小企業経営の場合、従業員の声を聞くことで業務の効率化・新たな戦略が生まれる可能性が高まると言っていいでしょう。
【事例】みんなの意見を大事にし始めた中小企業
ここでは、段ボールを使った製品(主に緩衝材)を作っている東濃コアー株式会社の事例を紹介します。企業としては、まだまだ成長する余地があり、改善がスタートしたばかりですが、すでに業績は伸びてきています。
みんなの意見を聴くようになってから、ミスが減り、社内の雰囲気が良くなってきた。
どの様にしてみんなの意見を聴き、変容していったのか簡単に解説します。
東濃コアー株式会社の悩み
段ボールを使った緩衝材を受注生産している企業はそう多くはないために、競合が少ないという点が大きなメリットです。とはいうものの、受注生産している製品が非常に多く、手作業の工程が多いために、次の様な問題を抱えていました。
- 寸法違いのミスが生じることがある。
- 納品数が足りていなかった。
初歩的なミスだけど、人が作業している以上、どうしても生じてしまうんだ。これでは、会社の信頼を損ねてしまうし…。
そこで、こうしたミスが少なくなるように、経営者自ら案を出し、徹底管理をするようになっていきました。ところが、あなたもお気付きの様に、管理を強くすればするほど従業員は窮屈さを感じ、人間関係にも悪影響を及ぼすことがあります。
実際に私が社内に入り、従業員の本音を聴いたところ…
- オーダー通りに製品を作るのが私の仕事で、私はつねにきちんとしているから別に問題ではない。
- 社長は、作業の効率化と正確性をいつも言っているけれども、どうすればそれが実現できるかを考えるのが社長や上司の仕事じゃないの?
- いろいろ守らないといけないことが多いので、それを守って仕事をするのが精一杯です。
残念ながらこうした反応だったのです。つまり、「会社としていい製品を提供する」という意識よりも「お金を貰うための仕事だから個人として頑張る」という意識の方が強かったのです。
では、こうした状況からどうやって改善を目指したのか解説します。
本当は誰でも人の役に立ちたいという本能をもっている
そもそも様々な会社の中小企業経営を見て、感じるのは、
本当は誰でも人の役に立ちたいという本能をもっている
この人としての素晴らしい本能をおきざりにしているケースが多いということです。
人はクマやライオンよりも弱い生き物ですが、食物連鎖の頂点に立ち、数万年も命を繋いで来られたのはなぜでしょうか。それは、お互いに協力することができたためです。つまり、「誰かの為になることをすることに喜びを感じる」という素晴らしい本能をもっているために、生きてくることができたのです。
仕事の場合、売り上げ・利益・給与など様々な数字で評価しますが、決してそれだけでは、人の行動は変容しません。
あなたの考えがいいヒントになった!
ということを経営者が従業員に伝えていくことで、この本能が満たさせていくということは忘れてはいけません。とは、いうものの経営者からすれば、「ある日突然、こんなことを伝えるなんて変だと思われる」と感じる方も多いでしょう。実際に東濃コアー株式会社でもこうした声を聞きました。
この点を改善していくには、そうなる原因をさらに深く追求する必要があります。
従業員をしっかりと認めていきたいが、どうしていいのか分からない。
中小企業の経営者は、「従業員をしっかりと認めていきたいが、どうしていいのか分からない。」という悩みを抱えている方もかなり多いのが現状です。なぜ、こんな風に思うのか?私のこれまでの経験を整理しておきます。
- 「給料を払ってやっている」という意識がどこかにあり、従業員よりも経営者の方が立場が上、または、自分の方が大変なことをしているという感覚がある。
- 従業員との距離を縮め、素直に想いを表現したいが、従業員からの要望・質問に答えるのが大変。
- 自分が会社の中では、一番経験があり、多くのことを知っているために簡単には認められない。
- 自分が下っ端の頃は、厳しい環境の中で耐えてきたのだから、褒める・認めるなんて必要ない。
経営者によって考え方は様々ですが、こうした傾向がよく見られます。これでは、従業員との距離はひらく一方で、仮に認める様な言葉を掛けたとしても、従業員の心には響かないことは、十分想像できるはずです。
ですから、
もし、従業員が明日から出勤しなくなればどう感じますか?
こうしたことも、経営者には繰り返し考えていただきました。また、実際に幹部が一斉の離職してしまったという会社のエピソードなどもお伝えしてきました。こうすることで、少しずつですが「従業員の存在は有難い」「〇〇さんのおかけで、会社の雰囲気がよくなってきた」などと思えるようになってきました。
経営者がこうした気持ちになれた時に、初めて「聴く」ということが正しくできるのです。
具体的な話の聴き方
話の聴くためのテクニックはたくさんありますが、経営者や上司が話を聴くのに難しいテクニックは、一切必要ありません。
- 質問をする従業員はいるが、必ずしも答えを求めている訳ではない。
- 自分と異なった考えが出てきた時に、新しいアイディアのヒントに出会ったと理解する。
- 自分の考えは、求められた時に言う。
これらの点が意識できれば十分です。極めて簡単に言えば、こういうことです。
なんで、こんなにたくさん勉強しないといけないの?
面白くないし、面倒くさい。
何バカなことを言ってるの?
大学に進学しないと就職に困るでしょ。その為の勉強でしょ。
ごちゃごちゃ言っている暇があるなら、単語の一つでも覚えなさい!
お母さんの言っていることは、正しいと考えられる部分もありますが、これで、子どもの心は変化するでしょうか。
こうした対応をするより、
なんで勉強しないといけないのか?難しいことを考えるようになったね。
お母さんも子どもの時、何度も考えてみたことがあるけど、よく分からなかったわ。一緒に考えてみようか。
この方が圧倒的に子どもの満足感は高いでしょう。これは中小企業の経営も同じことで、経営者だからと言って、全ての問題に答える必要はありません。こうしたことに気付かれた、東濃コアー株式会社は、従業員との距離が少しずつ縮まってきたのです。
その結果、従業員からも「〇〇した方がもっといいんじゃない?」という声も挙がるようになってきました。こうした声が挙がるということは、従業員の意識が、「個人(自分はちゃんとしている)」から「会社として」に変化してきた証拠だと捉えています。
ここまで来ると、新しいアイディアを形にするのも随分楽しく・早くなってきますので、今後の成長が楽しみになってきました。
なお、みんなの意見を聴くためにどうすればいいのか?は、部下から慕われる経営者・上司になるために実践すべきことの記事も参考になるはずです。