【事例】慕われる上司の力は大きい!【赤字から黒字へ変化】
「このままでは、会社はどんどん厳しくなっていく。中小企業の場合は、なおさらのことだ。」こう言われることはよくあります。もちろん、全ての中小企業が苦しい状況だとは限りませんが、先日、ある経営者の方がこんなことを言われていました。
以前の私なら、経営戦略的なノウハウに目が行っていましたが、最近では、もう少し長い目でみると、従業員の育成とかチームワーク、社風といったものが何よりも重要だと思えてきました。
そこで、書籍などを読み漁ってみましたが、書かれている事例は、弊社と状況が大きく異なり、資本力も全く異なるばかりで、参考にならないというのが正直なところです。
町野さんは、様々な中小企業、弊社のように従業員が10人未満の会社にも関わっておられるお聞きしていますので、何か参考になる事例を聞かせて欲しいと思います。
中小企業の経営・人材育成について理論を学ぶことは大切ですが、私自身も、様々な中小企業の従業員の方々と関わりながら、現場で学ぶことの方がはるかに実り豊かだと感じています。
そこで、今回は、
慕われる上司の存在の大きさが感じられる事例
(赤字から黒字への飛躍への道のり)
を紹介します。良い状況が生まれるまでにどの様なことを考え、実践されてきたのかも合わせて紹介しますので、ぜひ、参考にしてください。
最初から上手くいっていた訳ではない
今回は、先に触れた様に「良い事例」を紹介しますが、当然、最初は非常に厳しい状態でした。どのくらい厳しい状況だったか簡単に紹介します。
会議ってやる意味がないから、会議はしません。
会議がほとんど行われていませんでした。会議をすれば良いという訳ではありませんが、半年に一度程度、形ばかりの会議が行われているという状態で、次期社長も「会議で何を伝えたらいいのか分からない」という状態。
この雰囲気は従業にも伝わり、
- 会議をする意味、目的が感じられないから、会議はしない方が時間が有効に使える。
- 特に営業という仕事は、個性が出るものだから、個人プレーでも問題ない。
こんな雰囲気が根強く残されていました。
自分の弱いところはあまり見せたくありませんから。
次期社長は当初、次のようなことも言われていました。
自分自身、営業力も指導力もありません。どちらかというと至らないことの方が多いので、従業員に厳しいことを言うことができません。自分のことを棚にあげるか、失敗したこともオープンにする必要があると思いますが、自分の弱いところは立場上、見せたくありませんでした。
次期社長の言葉
だから、従業員との距離を作った方がいいと思っていました。
自分の立場を守るために従業員との距離を空けても何もメリットがないということは、あなたも十分理解できるのではないでしょうか。
チャレンジをする風潮がまったくなかった。
ここで紹介している中小企業が取り扱っている商品は、障子・ふすまなどがメインです。時代の流れを考慮すると、年々厳しくなっていくことが想像できるはずです。
こうした状況を打破するためには、新規開拓にチャレンジする必要がありますが‥
そちらの旅館で、ふすまや障子が痛んだ際には、どうされていますか。
こうした飛び込み営業をする人は、誰もいませんでした。飛び込み営業については、いろいろ思うことがありますが、一事が万事、新しい行動を生み出そうという風潮は皆無という状態でした。
この様に、
- 時代の流れを見ても厳しい商材を扱っている中小企業
- 社風も決して良いとは言えない中小企業
が、どの様にして「よい会社」に変化していったのか解説します。
【危機感は大切】先を考えると怖くなってきました
「会社の将来を考えると不安になる」という声を聞くことがありますが、私は、決して悪いことではないと思っています。ここで紹介している中小企業の場合は、この「不安」をしっかり分析的に見つめることができたために、大きく変化することができたのです。
5年後会社は成長していると言えるだろうか。
私が関わりをもっている会社の経営者や従業員の方々には、
5年後、会社はどのようになっていると思いますか?
と質問をすることが多いです。ここで紹介している中小企業の次期社長はこうした質問をした際に、「恐怖の様なものを感じる」と言われていました。
漠然と「恐怖」を感じていても仕方がありません。具体的にその要素を細かく分けて整理していくと、何から手をつけて行けばいいのか明確になるものです。
こういうとシンプルで当たり前の作業の様に見えるものですが、これは経営者・上司自身で行うことは相当難しいものです。人はどうしても、都合の悪い部分に蓋をしてしまいたくなるためです。
次期社長の場合は、私とこうした話をすることも快く了承してくださり、通常なら見たくない部分にもしっかりと目を向けられたために、最初の一歩を踏み出すことができました。
自分は一生懸命やっているのに、会社はやってくれない!という声
また、中小企業を成長を導くには、従業員の意識は非常に大切です。そのため、最初は、経営者・上司との距離が開いてしまっている場合には、私が間に入り、本音をヒヤリングすることにしています。
今回紹介しているケースも
自分は一生懸命やっているのに、会社はやってくれない!
従業員の本音
という声が聞こえてきましたが、この言葉の裏にあるものは何か?次期社長は真剣に考えたのです。考えただけで、すぐに何か変化が起きる訳ではありませんが、例えば、
〇〇さん、最近、仕事が丁寧になりましたね。
などと声を掛けても、従業員はこの言葉を素直に受け止められるようになってきました。従業員に掛ける言葉が以前と変化してなくても、「言葉は人柄(心)を背負うもの」ということが次第に感じられるようになってきたのです。
〇〇さんだからできるんだ!を克服するために
株式会社糸惣には、有能な営業マンの方がいましたが、先にも触れたように、営業は個性や個々のスタイルがあるものという風潮が根強くありました。つまり、
〇〇さんだからできるんだ!自分たちが真似をしようと思ってもできない。
こうした考え方があったために「会議を行う目的がない」という状況でした。
ただ、次期社長の想いとしては、「個人プレーの良さもあるが、チームプレーができれば更に大きな結果を出せる。」というものがあったために、当初は反対の声もありましたが、定期的に営業会議を行うようにしました。
この変化は会社にとって非常に大きなもので、今、振り返ってみると会社が大きく変わる一つのきっかけの一つとなりました。
自分の弱点を克服するか?代わりで埋めるか?
あきらめも時には必要
次期社長には、様々な想いがありましたが、上司として非常に大きな問題を抱えていました。「人に強く言えない」というもので、上に立つものとしては、大きな弱点です。
何度もこの弱点を克服しようとされていましたが、「無理に弱点を埋めるよりも代わりにできることでカバーする」という方向に切り替えたのです。
そのため、自らより積極的に営業に周り、結果を出すことにフォーカスしました。そして…
- 上手くいった要因を分析し社内に共有。
- 恥ずかしい失敗事例も隠さず、オープンにする。
こうしたことをコツコツ実践してきました。誰にも言えない秘密のマーケティング戦略をとったと言う訳でもなく、上司としてできることを丁寧に実践したものです。それでも、社風はガラリと代わり、非常に厳しい業界でありながらも、業績を大きく伸ばすことに成功したのです。
仕事が難しいのではなく、自分の殻から抜け出すのが難しい
こうした流れを見ると、中小企業がより良い方向に進むためのポイントが見えてきます。
- できれば見たくない部分もフラットな視点で見ようとする勇気。
- 従業員の本音に耳を傾ける勇気。
- 失敗を自ら見せる勇気。
株式会社糸惣の次期社長はこんなことを言われていました。
仕事を上手にこなすことも大切ですが、従業員と共に変化していくことを目指すならば、自分自身が変わる勇気をもつことが最も大切だと思います。
これは、簡単な様でとても大変ですが、人と人とのつながりは、いつの時代も大切にされてきたものですから、どんなに時代が変化しても、変わることはないと思います。
こうした取り組みに即効性はなかなかありませんが、長い目で見ることの大切さを私自身も改めて感じることができました。