【中小企業の事業成長】叱り方を真剣に考えるだけでも事業を成長させることができる。
コロナも落ち着きを見せ始め、「3年ぶりに…」なんて言葉を聞く機会が増えてきました(2023年3月現在)。大手企業は、賃上げを発表し、景気回復への期待感を抱いている方も多いと思います。
ただ、ここで注意しないといけないのは、「社会の変化の流れに乗って、チャンスを掴みたい」という気持ちになってしまうことです。先日もある中小企業の経営者がこんなことを言われていました。
この3年間は、コロナの影響で眠っていたようなものですね。
ところが、コロナが落ち着き始めたので、「さぁ、やるぞ!」という気持ちです。でも、何だか自分だけ張り切っていて、従業員との温度差を感じます。
そうそう、私の会社も同じ様な感じです。
従業員に当事者意識がない感じがして、ついイラっとして怒ってしまうんです。
社長がお若いと従業員から舐められやすいかもしれませんね。
でも、仕事は仕事!ダメなところはハッキリとビシッと言わないとダメですよ。
どうやらお二人とも、
- 従業員のモチベーション(やる気)の低さ。
- どの様にして従業員のモチベーションを高めるのか?
に関心があるようです。これらについて、私は自分自身の過去の経験から、
従業員の行動を変容させるのに
問題点を指摘し続けることは、大きな損害を被ることになる。
と、様々な中小企業に伝えてきました。なぜ、注意の仕方、叱り方一つで、大きな損害を被るのでしょうか。実際に、私が関わり、注意の仕方・叱り方などを改善され、社風が変わり、成長することができた会社は、現在100%ですから、ここでお伝えすることを是非、参考にしていただけたら幸いです。
従業員に対しての注意の仕方・叱り方が重要な理由
先に見た会話の通り、「仕事は仕事!」「ダメなものダメ!」という考え方は、私も確かにその通りだと思います。ただし、問題点は、この考え方をどの様にして伝えるか?という点です。
適切な伝え方ができないと、従業員のモチベーションは確実に低下する。
これが、中小企業の成長とどの様な関係があるのか詳しく解説します。
至らない点を指摘されるとモチベーションが下がる【誰もが経験している事例】
学校教育を振り返ってみると良くわかります。
例えば、Aくんの学習の成績が悪かったとします。そして、担任の先生は、「なんとかAくんの成績を向上させたい」と考えている場合、どの様な言葉がAくんにかけられるでしょうか。
- このままでは、進学に差し支える。勉強しないとヤバいぞ。
- それでは、希望の職業に就けないかも。そうなったらどうやって食べていくんだ?
- 今度のテストの結果が悪ければ、夏休み補習をすることになる。
- 今は辛いかもしれないけれども、頑張ったら志望校に行けるかもしれないぞ!
基本的に「恐怖」を伝えて行動を促すか、「メリット」を伝えて行動を促すか…どちらかのパターンが多いのではないでしょうか。きっと、あなたも上記と似た様な言葉を言われたことがあると思います。
そして、重要なことは、この様な言葉掛けで行動が変わったか?という点です。もちろん、一時的に勉強を頑張った!という人は多いと思いますが、「勉強が好きになって、大人になってからも学ぶことを楽しめる様になった」という人は、極めて少ないのではないでしょうか。
実際に、高校3年生までは、毎日3時間程度勉強していたにも関わらず、大学1年生になると、学習時間がグンっと減ってしまう様です。1日1時間も勉強をしていない大学生が半数以上も見られます。
つまり、
恐怖やメリットを提示されて、一度は行動が変容したが、持続性はなかった
と言える一つの事例です。中小企業経営においても同様で、従業員が一時的にやる気は出たが持続することはなかった…となれば、大変だということは、十分想像できるはずです。
では、なぜ、一旦行動が変容したのに持続させることができなかったのでしょう。
変容した行動に持続性がない理由
一言で言えば、
楽しさ・充実感が感じられなかった
からです。先の勉強の例で言えば、恐怖やメリットが与えられたために勉強を頑張った訳ですから、非常に簡単に言えば、「やればいいんでしょ」という様な状態です。この状態で、内面的な充実感は決して得られないことは、十分想像できるはずです。
こうなると、中小企業の場合、悪循環が生まれやすくなってしまいます。
- 問題点を指摘すれば、一時的に行動の変容が見られる。
- 変容した行動に持続性がないために、再度、問題点を指摘する。
- 次第に問題点の指摘の仕方が激しくなる。
実はこの様なスパイラルにはまってしまい、社風が悪化し、離職者が出てしまうという状態に悩まされている中小企業は非常に多いのです。
離職者が出るということは、中小企業にとっては大きな痛手
私自身も経営者として、離職者を出してしまった苦い経験があります。退職者やそのご家族にご迷惑をかけてしまった…という申し訳ない気持ちにもなります。
そうした気持ちも大切ですが、企業としての損失もかなり大きなものになります。あなたもこの痛みは十分ご承知かと思いますが、簡単に整理しておきます。
- 再度、人材を確保するのに大きな経費がかかる。
- 新しい人材が確保できたとしても、教育をするのに時間と費用がかかる。
- 離職に至らなかった従業員のモチベーションも低下している可能性が高い。
金額的な換算をすることはできませんが、これは、中小企業にとって相当な痛手となります。ということは、経営者は、従業員を大事にすることを軸に会社経営を考えることが最も重要だと言っても、過言ではないということです。
先日、WBCで日本が盛り上がっている中で、若手のある経営者はこんなことを言われていました。
WBCの決勝戦は、平日の昼間。世間が盛り上がっている時に仕事に集中しにくいと思います。幸い、当社の仕事はこの日を休業にしても、顧客にご迷惑をかけることもないので、思い切って休業することにしました。
休業することはちょっとした痛手になりますが、こうした配慮して「働きやすい、面白い会社」と思って貰うことの方が圧倒的に価値が高いです。
ある中小企業経営者の言葉
厳しい指摘・叱らないのであれば、どうすればいいのか?
問題点を恐怖で煽ったり、メリットを提示してする方法で、従業員の行動を変容させるのは、大きな損失を招く可能性があります。では、どうすればいいのでしょうか。
失敗・問題点について一緒に考える。
ことが大切です。仕事に関わる人は、「何らかの成果を出したい」と考えるものです。反対に「失敗すれば悔しい」「問題が起きれば気がかりになる」こういった状態になりますから、失敗や問題が起きた時に「ダメだ」と指摘しなくても、本人はダメなことは重々分かっているものです。
それよりも大切なのは、
- 今後、似た様な失敗をしない様にするにはどうすればいいのか?
- 問題を解決する手立てはあるのか?
これらについて考えることに時間と労力を使うべきです。「そんなこと当然じゃないか!」という声も聞こえてきそうですが、実行に移すことは、なかなか難しいものです。
ただし、こうした対策を考えるにあたって注意すべき点もあります。
とんでもない問題になってしまったじゃないか!
これからどうしたらいいのか、考えて文書にまとめろ!
確かに今後について考えることにはなりますが、この様子を見ていた他の従業員はどの様に感じるか?ということも考えてみる必要があります。上の様な場合、私なら、次の様なことを思うでしょう。
- 失敗したら叱られる上に、仕事が増えるだけじゃないか。
- 「何事も挑戦」というけれども、挑戦すれば失敗のリスクも高くなるから、辞めておいた方がいいだろうなぁ。
- 文書にまとめたところでどこかで本当に活用するのか?→無駄な仕事じゃないか?
こうなってしまいます。これでは、企業は成長することができません。ですから、
失敗から学ぶことができ、失敗が楽しいと感じられる雰囲気を作ることが重要
なのです。私が関わっている中小企業には、次の様なことを意識する様に伝え、私も経営者と従業員の間に入り実践しています。これまで、様々な中小企業で実践してきたこととの中でも、業種に関係なく実践できることを紹介します。
- 立場が上の人が自ら過去の失敗を話す。
- 失敗から学ぶ場を作る時には、「失敗をしない人はいない」ということを上の立場の人が必ず語り、事例を提供してくれた人に対して感謝を述べる。
- 社内で起きた失敗の全責任は、経営者にあることをその都度宣言する。
これらを言葉で言うのは簡単ですが、これまで「経営者は偉い!」と心のどこかで思っていた方ほど、実践するのは難しいものです。ところが、この姿勢を変えるだけでも従業員のモチベーションは100%上昇していきますから、過去の自分とお別れする覚悟をもって欲しいと思います。
ある場所にこんな掲示物が貼ってあったことがあり、私の心に残っています。
絶対に失敗しない方法を教えよう。
それは、失敗しそうなことをやらないことだ。
ある教育施設に掲示されていた言葉
例えば、逆上がり。失敗したくないのなら、やらなければ絶対に失敗しない。
従業員のやる気に関しては、仕事に対するやる気の根源は?「報酬」or「やりがい」?の記事も参考になるはずです。