【中小企業の従業員のやる気】やる気について学べば学ぶほど陥りやすい罠
中小企業の従業員のモチベーションは、会社経営にも大きな影響を与えるものです。先日、ある中小企業の経営者から次の様な質問をいただきました。
従業員のやる気を引き出すことが、今の弊社にとっては、とても大切だと思っています。ですから、様々な本を読んだり、セミナーにも参加したりしてきました。
でも、やる気を引き出すことについて学べば学ぶほど、息苦しさの様なものを感じるのです。自分の至らないところ、会社全体でできていない所が際立ち、どうしてもネガティブになってしまうのですが、どうしたらいいのでしょうか。
私も会社経営が厳しい時には、何かにすがる想いで、様々な本を読み、セミナーに参加したものです。ですから、この経営者の方の想いは、自分ごとの様に感じました。
その上で、次の様な結論をお伝えしたのです。
ネガティブな感情は、一般的に悪い様に言われますが、ネガティブな感情が湧くことは、正常であり、会社経営にとっても、大きな力となる。
なぜ、この様なことが言えるのか、詳しく解説します。
ネガティブな感情があるからこそ、人は命を守ることができた
一時は、「ポジティブシンキング」という言葉も流行り、何でもポジティブに考えるとビジネスも上手くいくと風潮が生まれました。確かに、何事もネガティブに捉える人よりも、ポジティブに捉える人の方が接していて心地いいものです。
ですから、日常生活においては、意識的に「ポジティブでいよう」と考えることは決して悪いことではありません。けれども会社経営となると話は別です。
蛇と自動車とどちらが恐ろしいか
蛇と自動車、どちらが怖いですか?
こう質問をすると、多くの人は「蛇の方が怖い」と答えるでしょう。ところが、現代の日本では、
- 蛇に噛まれて命を落とす人は極めて少ない。
- 交通事故によって命を落とす人は、年間約2610人(令和4年)。
統計的に圧倒的に自動車の方が怖いのですが、私たちは「蛇」に恐怖を感じるのです。どうして、こんな不思議な現象が起きるのでしょうか。
ネガティブな感情が生命を守ったことを深く理解する
蛇と自動車の不思議な現象の答えは…
蛇に対して恐怖心を方が、生命を維持しやすかったから
です。もう少し詳しく解説します。
もし、蛇に対する恐怖心が無ければ…
蛇なんか長いロープの様な生き物で面白いじゃないか?
見つけたら、つかまえてハチマキの様に巻いて遊んでも面白そうじゃん。
こんな強気でいれば、蛇に噛まれるリスクは高まります。これでは、命がいつくあっても足りません。この様な考え方では、命を繋いでいくことはできないのです。
もし、蛇に対する恐怖心をもっていれば…
うわぁ…蛇ってなんだか怖いなぁ。
急に襲ってきたら怖いし、とにかく余計なことはしないで、逃げよう。
この場合、「勇敢である」とは言えないものの命を落とすリスクは、前者に比べて圧倒的に低くなります。つまり、命を守るために「怖いなぁ」という感情は必要であり、こうした感情を本能的にもっていた子孫が私たちであるということです。
「高いところが怖い」「物凄くスピードが出ると怖い」という感情も、命を守るために備わっている感情と言えるのです。
社内でネガティブな発言があった場合にどうするのか?
ここまで見てきた通り、ネガティブな感情は決して悪いことではありません。ですから、ネガティブな感情が湧いてきた時に「ダメな感情が湧いてきた」と自分を責めたり、そういった発言をした人を責めることは得策ではありません。
とは言っても、ネガティブな言葉が飛び交う職場というのも気持ちの良いことではありません。
ですから、
- ネガティブな感情が湧くことは、人として当然である。
- 何から自分を守ろうとしているのかに注目し、問題の本質に迫る。
ことが大切になります。簡単な具体例を挙げてみます。
おいおい、何度同じことを言わせるんだ!
そんなことに時間を掛けていたら、いくら時間があっても足りないやろ!
いつになったら、できるようになるんだ。
この様な言葉が飛び交う職場では、従業員のやる気が削がれてしまうことは明らかです。ですから、改善が必要なのですが、重要な点は、
「言い方を変えれば良い」という問題ではない。
ということです。この場合の上司は、
- 時間に追われている(時間効率を考えないといけない状況)。
- 何度も同じことを言わないといけないことが嫌だ。
ということです。そして、この様な「恐怖となる原因」がより明確になってくると、どの様な対策が必要か見えてきます。
もし、ネガティブな感情に蓋をしてしまうとどうなのか?ということを今一度考える必要があります。
繰り返しになりますが、私たちが自然ともつ感情というのは、長い人類の歴史の中で、必要だからこそ備わったものであり、まずは、その感情を素直に受け止めるというのが、より良い会社を作る第一歩になるということを理解しておきたいものです。