

町野文孝
株式会社インターテック代表取締役・心理資本経営コンサルタント
これまで自身の中小企業経営の経験を活かし、様々な中小企業の人材育成・組織開発に関わる。方針を打ち出すだけではなく、自ら、企業に入り込み、従業員の方々とも対話を行いながら、組織を作りを行っている。
これまでに、関わった全ての中小企業は、現在も業績を伸ばし続けている。心理面がメインに感じられることも多いが、財務に関するプロでもあり、数々の資格を有している。
中小企業の場合、従業員のやる気が社風や業績にも大きな影響を及ぼすことも珍しくありません。そのため、中小企業の経営者の方と話をすると…
こうした内容が必ずと言って良いほど話題にのぼります。
では、どうすれば、従業員のやる気が成果に繋がるのでしょうか。私は、これまで様々な中小企業の人材育成・組織開発・財務管理に関わってきましたが、その経験からも、次の3点が重要だと結論付けています。
実際に、次の3点についてコツコツと実践されてきた中小企業は、この厳しい時代にも100%業績が伸びてきているので、ぜひ、参考にしてください。
これらに対して「Yes」と言える状態にしていくことがとても大切ですが、こう言った話をすると必ず言われることが…
従業員も少なく、年齢差もかなり大きいので、特に若手にとって良いモデルとなる人が存在しない。そんな場合は、どうしたらいいんだ?
ということです。私が関わっている中小企業も従業員が30人にも満たない会社も多く、若手にとってお手本(モデル)となる先輩がいないという会社も当然ありました。そんな場合、どの様にすればこの問題をクリアすることができるのか解説します。
まず最初に、そもそも若手の従業員にとってお手本(モデル)の存在が必要かどうか?という問題がありますが、結論は、
モデルの存在は非常に重要
なぜ、モデルの存在が重要なのか直感的な話と研究の結果を交えて解説します。
私たちは、世界の言語の中でもかなり難しいと言われる日本語を自由に使うことができているのはなぜでしょうか。
日本語の文法も分からない幼い子どもでもそれなりに日本語が話せるようになるのは、周りに日本語を話す人が多いためです。関西の子どもは、自然と関西弁を話すようになるのも周りの環境によるもので、モデルがあるために日本語・関西弁を習得しているということです。
仕事でも同じことが言え、若手が成長していくには、良いモデルが必要であり、モデルがなければ、どこを目指せばいいのかが、見えにくくなってしまうということです。
こういった現象は、児童保護基金を立ち上げたマリアン・ライト・エデルマン氏の言葉「見えないものには、なれない」に凝縮されています。
子どもにも働く人にとっても、ロールモデルの存在は非常に重要だと様々な研究で結論付けられています。国内の大学生を対象とした研究でも、ロールモデルの存在は、計画性・決断力・視野の広がりなどに対して良い影響を与えているという結果が報告されています。
詳しくは、大学生のキャリア発達とロールモデルタイプの関係をご覧ください。
なお、ロールモデルと一言に言っても、様々な形がありますが、ここでは、中小企業の若手にとって重要だと思われるモデルの型を紹介します。
営業マンであっても、社交性が強い人・弱い人・アイディアを創造するのが得意な人など、様々な人が存在します。この時、自分の特性と似た人が先輩として存在すれば、弱点をどの様に克服し、得意なところをどう活かしているのか、参考にすることができます。
誰もが、仕事で大きな成果を出したいと思うものです。ただ、その道のりはあまりにも長く、目標達成まで継続的に努力することはとても困難なものです。
ですから、「少し努力をすれば〇〇さんみたいになれそうだ」と感じられる存在は非常に重要です。こうした方の存在があることで、意欲が持続しやすいことも明らかになっています。
ところが、中小企業は組織が小さい為に若手従業員にとってモデルとなる先輩が存在しないという状況は当然です。この様な場合、どうすればいいのでしょうか。
小規模の中小企業の場合、一歩先を歩くモデルがいないのが通常です。ですから、
良い状態の自分をモデルにする
という方法を推奨することが多いです。どういうことなのか詳しく解説します。
どんな人にも「調子のいい時」というものがあります。例えば…
など、様々あると思いますが、残念ながら「常にベスト」を維持することは非常に難しいものです。優秀なゴルフ選手だって、いい時と悪い時の波があって当然です。
ですから、つぎの様に考えます。ここでは分かりやすいように「スケジュール管理」が苦手な営業マンを例を挙げてみましょう。
しまった!
せっかく、アポがとれたのにダブルブッキングしてしまった!
こんなミスをまたするなんて、俺は営業マンとして失格だ。
みんな、何でこんなミスはしないのだろう…。
中小企業の場合、こうした相談を聞いてくれる先輩がいないという状況が圧倒的に多いのが現状です。
ですから、「上手にスケジュール管理ができた自分をモデルにする」しかないのです。ところが、すでにお分かりの通り、失敗をした時というのは、精神的に落ち込んでいる場合も多く、自分で良い状態の自分を想起するなんてことは、なかなかできません。
「良い状態の時の自分をモデルにするといい」と言われて、それを実行できる人は、ほとんどいません。ですから、
上司にあたる人が良い状態の時の様子を伝える必要がある
これを実行するには、日頃からしっかりと見ておく必要もあり、一手間も二手間もかかることですが、継続することで、若手従業員のやる気は維持されます。
例えば、この様な声をかけることができます。
確かにダブルブッキングは、痛恨のミスだ。
でも、前に失敗した時は「予定を確認してからご連絡します」と言ってたじゃないか。
私も若い頃は、よくやったものだ。この言葉を口癖にしたらどうだ。
この言葉のポイントは2点。
ほんの些細な言葉掛けですが、経営者・上司というものは、ついつい自分ができることは部下もできると思ってしまうところがあり、こうした丁寧な言葉掛けを忘れてしまいがちです。ところが、こうした言葉掛けを意識することで、自分の経験が浅かった頃はどうだったのか?を思い返すこともできます。
こんな言葉掛けを意識されている中小企業は、小さい会社でも、人間関係も非常に良好です。
ここで紹介した様な言葉掛けをするのは、面倒でもあり、経営者の威厳が損なわれるのではないか…と思われる方もたくさんいらっしゃるのが現状です。
ただし、これを怠ることで次の様な問題が生じてしまいます。
これでは、どんなに業績を伸ばしたいと考え、マーケティング戦略を考えても上手く機能することはありません。当然、財務的にも厳しくなってしまうことは十分想像できるでしょう。
反対に、ちょっとした言葉掛けができると、離職率は格段に減り、新しいアイディアはスタッフの間から生まれることも珍しくありません。
あなたのちょっとした言葉掛けで、会社は本当に大きく変わるのです。
30年以上、中小企業経営を行っている。その間に大成功もおさめた一方で、離職などの影響もあり、経営の危機を何度か味わう。そこから再び這い上がりながら、「良い中小企業経営の形」を徹底的に追究。
現在は、自身の実践をもとに東海地域の中小企業経営のサポートを行い、関わりのある全ての会社の業績向上を達成し、採用に貢献。